続倉敷珈琲物 第13話「トルココーヒーの真相」
「トルココーヒー」という言葉を聞いたことがある日本人はたくさんいることと思いますが、その詳細までをご存知の方は少ないのではないでしょうか?
第13話は、その「トルココーヒー」を詳しく語っております。
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バザールで出会ったコーヒー売りのおじさんの話しは続いた。
「もともとトルコの民衆の中に浸透したといっても、全ての人が自由にコーヒーを愛飲していたというわけではない。現在のチャイのように気軽に何杯も国民全体がガブガブ飲んでいた時代があった訳ではな〜いのであ〜る。ところで、日本では重要な客人にはどんな飲み物をふるまうのかな?
実は、トルコのコーヒーは、大切なお客様をもてなすための貴重な飲み物として代々伝わってきたものであった。つい最近まで村落ではコーヒーを飲むための茶道具セットは一部の裕福な家の客室ぐらいにしか置いてなかったものだ。
客室は別棟に平屋建で建てられたお客様用の宿泊施設で、村の男達の集会場兼社交場としても使われていたようだ。客室は、父方親族の共有財産だった。村で幸運にもコーヒーを口にできたのは、ごく一部の重要な客と、重要な集会に参加した男たちだけ。
なんと、つい30〜40年ぐらい前までは、女性の大部分はコーヒーを口にする機会はほとんど無かったといってよいのであ〜る。訪れた時に客室でコーヒーをふるまわれたなら、重要な客としてもてなされているという証拠だった。
このように、トルコでのコーヒーは大切な客人を迎えるための貴重な飲み物であり、重要な意味のある特別な飲み物として今日に伝わってきたという訳。
そんなためか、コーヒーはチャイと比べて値段も高くて特別の意味あるものだから、トルコ人はあまりコーヒーを飲まないんだ。チャイは一日に5杯、いやいや10杯だって飲むけどネ!」
おじさんはゆっくりと、資料を見て自分でも確認しながら話してくれた。
<どうやら、あまり詳しい話を知っているトルコ人は少なそうで、おじさんも今読んで知ったのかも...?
トルコといえばトルココーヒーと答える日本人は沢山いるだろうけど、ここまでトルコの人達があまりコーヒーを飲まないことや、その訳までを知っているなんてきっと100人に一人もいないだろうなあ〜... なかなかいいことを聞かせてもらったナ! ウン!>
こんなふうに十分満足した上にさんざん長居をしておいて、何も買わずに帰ってしまっては、日本人に最悪のレッテルを貼られてしまいそうだ。
ここは気前良くコーヒー豆を買うことに決定。
しかししかし、せっかくだから、伝統的なトルココーヒーの飲み方を伝授してもらうことにも決定。
本場トルココーヒー講座の、はじまりはじまり。
まず、用意していただきますのは.....
1、とりあえず豆。
2、そして、コーヒー豆を煎って、冷やして、挽いて、沸かす、元祖コーヒーセット。
3、最後にコーヒーカップ。
となっております。
まぁ、豆は現在ではいろいろな国から輸入されていますが、ここはいにしえの香りを求めて、アラビアから伝わってきた「モカ・マタリ」がお勧めとさせていただきましょう。
さて、問題は2のコーヒーセットでございましょう。
こんなもん日本じゃあそんなに簡単には手に入りません。ましてや伝統的ないわゆる骨董品はなかなか貴重です。いい仕事しているコーヒーセットを見つけたら即買って、お宝にしてください。
さて、コーヒーセットの説明を行いましょう。
まず、豆を煎る「コーヒー豆煎り」は鉄製で、長い(40〜50センチぐらい)柄の先に丸い小さなフライパンの様な煎り器がついております。いわゆる柄が少々長くて小さいフライパン(直径15センチ)を想像してください。
これに普通は蓋がついておりますが、何に使うのかよくわかりません。(蒸す訳でもないしなあ...?誰か知っていたら教えてください。)
柄は携帯に便利なように、二重または三重の折り畳み式になったものが重宝します。
いわゆるイロリのような火をおこす場所で、薪を燃やします。コーヒー豆煎りに豆をいれ火にかけます。
長い柄の先を手にもって、豆を万遍なくなく棒のようなものでかき混ぜながら、香ばしい香りを楽しみながら深煎りまで煎ります。
熱々のコーヒー豆を冷ますのが、「ソウダン」と呼ばれる木製の容器です。
全体に平べったい箱型の入れ物ですが、一端の口がすぼまっていて豆をコーヒー挽きに入れやすくなっています。銀の象嵌(金属・木材・陶磁器などの面に模様を刻んで金銀をはめ込むこと)を施したものも見られ、お宝度満点です。
コーヒー挽きは引き出しのついた箱の上に鉄製の小型の挽き臼がついた形です。
「カフウェ・デイルメニ」と呼ばれ、喫茶店のディスプレーなどで見かけた方も多いと思います。
高級品は真鍮や銅製・銀製などもありますよネ。
ちいさな把手をつかんで水平面上をグルグルまわして豆を挽きます。
挽いた粉は引き出しに溜まる仕掛けです。
挽いた粉は「カウフェ・イブリイ」(イブリックというのは聞いたことがありますよネ?)と呼ばれるコーヒー沸かしに入れます。カウフェ・イブリイは短い柄のついたポット状の銅製容器です。
一人用、二人用など人数分に応じていくつかのサイズがあります。
それに人数分のコーヒーの粉と水そして砂糖を入れます。
カウフェ・イブリイを火にかけ中味をゆっくりとかき回し、沸騰すると各人のコーヒーカップに注ぎます。
コーヒーカップは「カフウェ・フィンジァヌ」と呼ばれふつう陶製のものが多いです。少し大きめのぐい呑みくらいで、古いものには把手はついていません。
各人のカフウェ・フィンジァヌに注ぐ際、少しコーヒーを残しておきます。
その残りをもう一度火にかけると沢山の泡がたちます。
この泡を各人のカフウェ・フィンジァヌに泡が万遍なく広がるように注ぎたすのです。
注がれてすぐはコーヒーの粉が浮遊しているので、少し待ってからそのうわずみをすすります。
このときに、音をたててすすっても失礼とはされないそうです。
トルココーヒーは砂糖が苦手な人にとっては、甘くてとても飲めないと勘違いしないでください。
ちゃ〜んと、砂糖の分量に関しても4段階に区別してもてなすことが作法とされているのです。
たくさん「チョク」、中ぐらい「オルタ」、少量「アズ」、砂糖なし「シェケルスズ」の4段階です。
主人は客人の砂糖の要望を聞くことを省くことはできません。
さて、あなたの今日のお好みは、アズでしょうか?
以上、本場トルコのトルココーヒー講座でした。
いかがでしたか?
本場もんを飲んでみたくなったでしょう?
ドロ〜としたコクのあるおいしいトルココーヒーに、ぜひ一度トライしてみてください。
さて、東洋と西洋のかけはし、ここトルコを通じて、コーヒーはいったいどこへ伝わったのでしょうか?
次回は、ついにヨーロッパ! さてどこでしょう?