続倉敷珈琲物 第24話「どや、おまえも飲んでみるかい...?」
やっと日本まで辿ってくることが出来ました。
トルコあたりからコーヒーロードはいくつかに分岐して、全てを追うわけにはいかず、日本へのルートのみを追ってきたわけです。
さて、日本にはいつ頃どこから珈琲は伝わったのか?
続きをどうぞ...
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「ここは、1543年の種子島。あそこで鉄砲を持って立っている男がみえまっしゃろ...?
あの人が、ここの島主の種子島時堯(たねがしまときたか)です。」
「たしか、ポルトガルの船が漂着して、その時、鉄砲が伝わったんだよネ?」
「そのとおり!
そのころのヨーロッパでは、マルコポーロが書いた東方見聞録の影響で、我も我もと各国が、黄金の国ジパング目指して、競って航海を重ねていた時代でしたねん。
この鉄砲伝来はそうした中で、最初に日本人とヨーロッパ人が接触した歴史上重要な出来事でんな。」
「で〜...。コーヒーもこの時伝わったという話なんでしょ?」
「なに言うてまんねん。あきれて、物も言えんとはこのこっちゃな。
せっかく歴史を旅してきたのにタカシは時代感覚がめちゃくちゃやんか!」
「なんでやねん?」
「ここまで言うてもまだわかりまへんか?
世界の歴史の流れと、日本の流れを、解りやすく表にしてあげまっさかい、ちょっと勉強してちょうだい。ええですか...?」
「ええですかって、ええですよ。勉強すりゃ〜ええんでしょ。」
たしかに、ラッキーが言う通り、まったくチンプンカンプンのタカシであった。
いつものようにラッキーの目から写し出された物は、簡単な年表のようなものだった。
ヨーロッパ・アラビア |
日本 |
1510年 カイロにコーヒーが紹介される。 | 1543年 種子島鉄砲伝来 |
1554年 コーヒーコンスタンチノープルへ伝播 | 1549年 フランシスコ・ザビエル来日 |
1571年 長崎港開港 ポルトガル貿易盛んに | |
1573年 室町幕府滅亡 | |
1584年 スペイン船平戸港に来航 | |
1590年 豊臣秀吉天下統一 | |
1600年頃ババ・ブータン、イエメンからインドへコーヒーを持ち帰る。 | 1600年 関ヶ原の戦い オランダ船リーフデ号来航 |
1603年 江戸幕府開く | |
1615年 ベネチアにコーヒー伝わる | 1613年 イギリス来航 |
1623年 スペイン・イギリスに対し鎖国令 | |
1640年 初めてアムステルダムへコーヒー輸送 | 1639年 鎖国令 ポルトガル追放 |
1641年 オランダ人を出島に移す | |
1644年 初めてフランスにコーヒー伝わる | |
1645年 イタリア最初のコーヒーハウス開店 | |
1650年 イギリス最初のコーヒーハウス開店 |
「どや? わかるかな...?
ザビエルが日本に来た頃は、やっとトルコにコーヒーが伝わろうとしていた頃でっしゃろ。
せやから、ポルトガルやスペインからその時代にコーヒーが伝わる訳ないというこっちゃ。
この年表から見て解ることは、鎖国令までに日本にコーヒーを伝える事ができた可能性がある国はオランダだけっちゅうことやね。
鎖国令がひかれても、オランダだけは長崎出島を通じて貿易が許されていた訳やから、オランダから日本にコーヒーは伝わったと言って間違い無いという訳や!」
「最初からそうやって教えてくれればいいのに...まあいいや、ところで最初にコーヒーを飲んだ日本人は当時の将軍様なの...?」
「長崎出島は、徳川家光が作らせた人口島や。
奉行所の許可をもろうて出入りできたのは、特定の僧侶、役人、商人、蘭通詞(通訳)、そして遊女だけやったんですわ。
当時幕府は、日本人がオランダ語を学んで交渉事にあたることを奨励してたみたいですナ。
せやから、出島のオランダ人のそばには何人かの日本の通訳がいっつも一緒にいて、いろいろと身の回りの世話をしてたようですな。
家光がわざわざ出島まで出向いて、飲んだことの無いコーヒーを日本で最初に飲んだとは思えまへんな。」
「そうだよね。江戸から出島までの道のりや、当時の情報量からみても、遠方の将軍が最初に飲んだとは思えませんね。」
「ましてや、真っ黒い怪しい飲み物を、将軍がいきなり飲む訳ないわな〜。
毒味役が最初に飲むに決まってるっちゅうもんや。
まあ、想像やけど、女人禁制の出島で親身になってオランダ人の身の回りの世話をやいた遊女が、日本で最初にコーヒーを飲んだんやと、わては思いまっせ!
こんなふうにな.....
枕元に置いてあるコーヒーポットからコーヒーカップにゆっくりとコーヒーを注ぎながら...
<この真っ黒い飲み物は、何という飲み物ですか...? おいしいんですか...?
なに? コーヒーを見たことがないのか。 そうか、どや、おまえも一杯飲んでみるかい?
えっ いいんですか? じゃあ、ちょっとだけ.......ニガ〜イ.....でも、不思議な味...>
どやどや、タカシもそう思うやろ!」
妙に役者付いてきたラッキーは最高におかしかったが、熱演のラッキー説にはタカシも同感であった。
「せやね、やっぱ僕がオランダ人だったとしても、いつも身近にいてくれる女性にまずは飲ませてあげるような気がするネ。
その後、コーヒーは出島以外にすぐに普及していったの...?
日本で最初のコーヒーハウスは九州にできたの...?
早く知りたくなってきたよラッキー」
「ところが、日本では、そんなに簡単ではなかったんだな〜これが...」