続倉敷珈琲物語 第55話「昭和3年...喫茶店二...!」
倉敷で最初の喫茶店はどこにあったのだろう?
なんていう名前の店だったのかな?
さらには、岡山での「カッフェー・ブラジル」のように、みんなに愛され、時代のエポックメイキング的な役割を果たした、倉敷の喫茶店とは、いったいどこだったのだろうか?
図書館の郷土資料には、古い喫茶店の情報は何もなかった...
図書館司書の方に相談すると、それらしい資料が市役所にあると言う...
お願いして、市役所の市史編纂室から一冊の資料を取り寄せていただいた。
昭和3年の発行である。
この資料の中には、当時の倉敷の産業に関する統計データが記されていた。
当時の喫茶店に関する記述を探したところ、次のようなページを見つけることができた。
「倉敷市案内」 玄石文庫 114ページ
当時の日本における「カフェー」とは、女給さんのいるお酒を飲むところであった。
最後の記述に「喫茶店二」という字が見えるだろうか?
たったこれだけである。
たったこれだけ、「喫茶店二」という記述が、現在の倉敷市の郷土資料から得ることができる初期の喫茶店の歴史の全てであった。
昭和3年当時、倉敷市には
二つの喫茶店がたしかに存在していた!
どこに.....? 名前は.....? 気になるところであるが、この資料からは何も読み取れない.....
巻末に協賛したと思われる商店の宣伝のページが載っていた。
コーヒー.........!?
ぱらぱらとページを流していた私の目に、コーヒーの文字の残像がかすかに残った...............
もう一度! 今度はゆっくり..................................
たしかに、「コーヒー」を食料品として扱っていたことがわかる。
そして、「マスヤ喫茶部」というその場所で、喫茶ができる店がたしかに存在していた事もわかる。
当時の記録の「喫茶店二」の中の1つは、この「マスヤ喫茶部」であることは間違いないだろう。
喫茶店でコーヒー茶碗に入ったコーヒーを振る舞い、気に入った客にはコーヒー茶碗もコーヒーも販売するという、なかなか商売上手な様が見て取れる......
残念ながら、残り1つの店の情報は何も載ってはいなかった......
当時のマスヤ喫茶部に行ったことがある人や、覚えている人はいないだろうか?
コーヒー一杯いくらだったのだろう?
昭和3年当時、目新しい喫茶店に出入りできる人は、そこそこのお金持ちか、新物好きか.......?
どちらにしても、だれかれとなく出入りしていたとは思えない。
そんな場所に入れる年齢を仮に20歳としても、昭和3年は1928年だから、当時二十歳の人は今なんと93歳である。
(この文章を書いたのが2001年でしたので、2011年の今では103歳になります)
いろいろと、お年寄りにマスヤ喫茶部のことを尋ねて回ったが、今のところ知っている人にめぐり合うことはできていない...
もしも、マスヤ喫茶部を知っていると言う方がいらっしゃったら、ぜひ、ぜひ、ご一報をお願いします!
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さて、行き当たりばったりに、昭和3年の喫茶店のことをお年寄りに尋ねても、さっぱり情報が入らないので、今度は方針を変えて、倉敷に古くから店を出されている、喫茶店の老舗めぐりを始める事とした...
岡山でのカッフェ・ブラジルのように、今はなくても人々の思い出にずっと生き続けているような.....そんな倉敷の最初の喫茶店を探すことも、大切な目標なのであった.......
地元の人に古くからある喫茶店を尋ねると、老松町の「小山珈琲」さんの名前がかえってきた.....
改装したばかりの店内は明るく清潔感があって、老舗とは思えないモダンな雰囲気であった。
「1976年からやってますけど、うちよりももっと古くからやってらっしゃるお店がありますよ....」
と言って教えてくださったのが、美観地区にある「珈琲館」さんと、美観地区に隣接する「サロニカ」さんだった。
倉敷川沿いに美観地区を突き抜けると、アンチークな雰囲気一杯の「サロニカ」さんが見えてくる。
見えてくると言っても、よくよく見なければ開店している喫茶店とはすぐにわからないかもしれない。
店先の小さなランプの灯りがオープンの合図のようだった。
<カランカラン>というカウベルの軽い響きが私の存在をでしゃばらずに伝えてくれた....
「いらっしゃいませ...」
ステンドグラス越しに入ってくる、やわらかいあかり.....
外から入ると、少し薄暗く思えた店内だったが、妙な、まあるい空気に包まれた気がした...
常連さんと思われる女性がカウンターに...
この店は初めてだったが、取材をしたい気持ちも手伝って、私はカウンターに近づき、革張りのいすに腰掛けた...
「こんにちは」
このときの私は、不思議と、これから何度もここを訪れることになる......そんな予感がしていた...