続倉敷珈琲物語 エピローグ
「よかったら、おかわり言ってくださいね...うちは、遠慮いらないですから...」
「すいません、急にお邪魔して...ありがとうござます」
ベルビューは、シアトルダウンタウンから車で約20分ほど東へ走ったところにある美しいベッドタウン
シアトルダウンタウンを新宿副都心とすれば、ベルビューの住宅街はさながら軽井沢といったところだ
大都会からたった20分で、避暑地に迷い込める
横田さんのお宅は、そんな閑静な場所にあった
「すいません、じゃ〜おかわりお願いします」
久しぶりの日本食に遠慮も無くおかわりをお願いした
焼き魚・肉じゃが・お味噌汁そして白いご飯.....
何よりありがたい!
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「もしもし横田さんですか? タカシです。今、電話よろしいか?」
「もちろんです。それで、どうでした? 墓地はわかりましたか?」
「ありがとうございました。見つかったんです、お墓! 教えていただいた墓地にあったんです!」
「いや〜本当ですか? よかったですね! いや〜よかったよかった!
実は、あそこしかないんじゃ〜ないかと、少々自信はあったんですが...とうとうみつけましたか...」
「はい、デジカメで写真を撮ってきました。どうしても見ていただきたいし、お礼もしたいし、今夜お時間ありますか?」
例の電話トラブルで一日中対応に追われ、一度も食事をしていないという横田さんを夜のシアトルに誘い出すことは遠慮した
そのかわり、「自宅でゆっくりとくつろぎながらでよかったら、ぜひどうぞ!」 と、お誘いを受けたのだった...
「いや〜、やっぱりあそこにありましたか!?」
「年代も古いし、あそこしかないよね...? って言ってたんですよ」
おなかも一杯になったころ、やさしい横田さんご夫妻の温かい言葉...
<仕事場以外でも気にかけて下さっていたんだ...きっと、いろいろと問い合わせなんかしてくれたんだろうな〜...?>
「すごく古いし、偽名で登録されていましたから、朽ち果てているのかと思ってたんですけど、とてもきれいにしてもらってて.... 見てください。これがお墓です!」
「いや〜! 感動ものですね...さっそく、記事を書いちゃいましょう!いいですよね?」
どこからこのバイタリティーは出てくるんだろう?
一日中、大変な状態で、すぐにでも横になりたいはずなのに.....
これが、ジャーナリストというものなのだろうか?
食事が終わる間もなく、とても楽しそうに、私にあれこれ質問をしながら、ノートパソコンのキーを叩く横田さんだった...
こうして、シアトルでのお墓探しは幕を閉じた
いや、ある意味での幕はこうして上がったのだった...
何かって?
実は、この出会いをきっかけに、新たなる物語が始まっている
ここシアトルで次々と、新たなそして忘れられない出会いが繰り返されている
不思議な縁だ
無宗教の私だが、「きっと、鄭永慶さんが会わせてくれたに違いない!」 という周囲の言葉に、うなずいてしまう
珈琲
その歴史と文化を捜し求めて旅を続け、かれこれもう3年近く...
コーヒーに関する知識なんて、これっぽっちも持ち合わせていなかった
おかげさまで、多くの珈琲に関する知識を吸収できたように思う
でも、この旅を通じて得られた一番のものは、人とのふれあいだった
何かに向かって一生懸命だったら、きっとわかってくれる人がいる
そのことに、楽しく前向きに取り組んでいれば、同じ方向を向いている友達が必ずできる
珈琲
その深い味わいは、さらに深く
今日も新たな味わいを醸し出してくれる
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今日は4月13日。日本で最初の本格的な喫茶店「可否茶館」が開業した日。
ねらったわけではないが、ちょうど倉敷珈琲物語の最終章のエピローグを迎えた。
ちょっと不思議な気持ちです。
今日は、可否茶館の跡地(今の三洋電気東京ビル)にて、可否茶館開業123周年記念会があります。
そこで講演を依頼されていますので、これから東京に向かいます。
そして、明日から、倉敷珈琲物語の続き「続倉敷珈琲物語」を書いていこうと思います。
10年前にお墓を見つけてから、不思議な展開が続いています。
そのご縁の中で、私は命まで救われました。
感謝の気持ちを込めて、続倉敷珈琲物語を書いていこうと思います。