続倉敷珈琲物語 第一話「なんでドリフのチョーさんが...?」-その2

今回の私の希望するコーヒーロードの説明を簡単にして、ガイドの依頼をしてみたところ、なんと嘘のような返答が返ってきた。

彼は約5年ほど前に私と全く同じ目的で訪れたコーヒー研究家のガイドを勤めた経験があるというのだ。

ついている!なんという幸運だろう。

彼の本当の名前は<アベベ>。すぐに覚えられた。

もちろん私たちは日本語で話した訳ではない。
私の非常に自分勝手な英語でなんとか通じていたのだ。

アベベの話す英語は私にとってはとても解りやすい英語だった。
ただエチオピアの人の英語はアメリカ英語よりも巻き舌が激しくて、その上「R」の発音がルとレの間のようなはっきりとした音として聞き取れた。

<例えば、カーブはカルブのように聞こえたのだ>

そしてアベベの英語は巻き舌が輪をかけて激しいため、ときどき巻き舌が返ったときに下顎に当たって「ポコッ、ポコッ」と音をたてた。

ニコニコ顔で、ポコポコ楽しい音をたてながら一生懸命話しをしてくれるアベベは最高のパートナーだった。

(以後アベベの言葉は日本語で書きますが、ポコポコ言いながらしゃべるアベベの姿を思い浮かべながら読んでください。なんとなくたどたどしい日本語のように感じたので、感じたままの日本語で表現することとします。)

「普通ジンマは飛行機だけど、最近雨だから明日バスで行く。」唐突なアベベの言葉...

「なんで最近雨が降ったからといってバスで行かなくちゃ〜ダメなわけ?」

「飛行場ベトベトで飛行機降りられない。だからバスで行く。わたしは正確!」

なんと、ジンマの飛行場の滑走路は舗装がされていないというのだ。
エチオピアの地方空港ではまだ舗装されていないところが沢山あるらしい。
信じられない話しだが、とりあえずアベベの言う通りジンマには明日向かうことにした。

今夜の宿も決まっていなかった。

アベベの勧める安宿のあるピアッサ地区まで、乗り合いワゴンで行くことになった。


アジスはやたら広いので青と白のツートンカラーの乗り合いワゴン(一般にタクシーと呼ばれる)が便利である。

空港からピアッサまでは1.1ブル(Birr)ほど。<1Birr=約20円>
普通のタクシーもあるが、10〜15ブルぐらい。交渉能力に欠けると50ブルということになる。

重い荷物を持ち運ぶだけで息切れがする。ここはアフリカであるが標高2400mの高地なのだ。

無事到着した安心感のせいか激しい疲労感と睡魔に襲われた私はホテルとの交渉をすべてアベベに任せて部屋にはいるなりベッドへ倒れ込んだ。

「明日11時に向かえにくるよ!」

アベベの言葉を繰り返し、繰り返し頭に入れながら...そしてあっというまに、睡魔に負けた。

すさまじい目覚めが待っているなど知る由もなく、私は曝睡した。