続倉敷珈琲物 第3話「ナチュラルコーヒーとの出合い」その1



ジンマの町は思っていたよりずっと人通りが多くにぎやかだった。

赤茶色の土、裸足の男たち、人と全く同じように堂々と道を歩くロバ

やかんを両手に持って沢山の食料を肩に担いだ男

なにもせずボ〜と遠くを眺めているおじいちゃんたち。

チョット見渡しただけでも100人〜200人の人やロバが目に入ってきた。

トタン屋根の家、道の脇には電信柱の様なものまである。活気のある町だ。



「ここから車をチャーターして、山奥の村まで行くよ!チョット待ってて。すぐもどる。」

アベベはそう言い残して町並へと姿を消した。
しばらくしてアベベは四輪駆動車を運転しながら私の前に現われた。

「さあ行こう!もうすぐね!」

「よっし行こう!ありがとう。」自然とお礼の言葉が口をついた。

アベベがいなかったらどうなってただろう。はたして無事ナチュラルコーヒーにたどり着けか?...
偶然とはいえアベベとの出会いをアフリカの神様に感謝した私であった。

突然周りの畑の色が変わった。遠くから見ても土が肥えているのがわかるほど湿気を含んだ枯れ草が覆い尽くしている。

徐々に見えてきた家々は、町のトタン屋根の家とは違い、丸い形の藁葺き屋根である。



目の前を少年が全速力で駆け抜けた。


信じられないことであった。
なぜって?ここは2000mの高地、私なら息も絶え絶えで、そこらで倒れていることだろう。
アベベやロバさんの活躍ぶりもうなずけるというものである。

村人にムリを言って野性のコーヒーノキを捜しに山中へ入ってもらった。

30分程歩いただろうか、村人の指さす方に苔むした一本の老木が生えていた。

それは農園のものとは違い、葉の色は薄く実は小さかった。

もっと野性味あふれるたくましい野性のコーヒーノキを期待していたのだが、違っていた。

しかし、今から約1400年も前に、ひょっとするとまさにこの場所で世界で初めてコーヒーが発見されたのかと思うと、感慨深いものがあった。

ここから、1200年もかけてどのようにコーヒーは日本まで伝わってきたのだろうか?

<コーヒーロードの旅の出発を祝って、まずはここジンマの珈琲で乾杯しよう...>

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、「クイックイッ」とカップで何かを飲む仕草をしながら私に笑顔を向けて、アベベが今来た道を引き返し始めていた。

車で町へ引き返す間に、沢山の荷物を背にしたロバを追い抜いた。
聞けばこのようにしてジンマの町まで獲れたコーヒーの実を運ぶのだそうである。

ジンマの町には立派なコーヒー取引所があり、一袋ごとに立会人の前で検量される。
こうして検量されたコーヒーは交易拠点のハラールへと運ばれるのである。


村の農園は果てしなく広く、すべての作業が人海戦術である。そして、完全無農薬。
くるぶしまで埋るような肥えた畑でみんなでのんびりと畑仕事をしている。



神が与えてくれた自然をそのままの形で受け入れて収穫できたここのコーヒーはどんな味がするのだろうか?