続倉敷珈琲物 第3話「ナチュラルコーヒーとの出合い」その2

「さあ、コーヒーを飲みにレストランへいきましょう。」と、アベベ

いよいよ、原生の地でのコーヒーとご体面である。

訪れたレストランは、アベベからレストランと聞いていなければ、それとわからないような薄ぐらい所であった。お願いして厨房を見せてもらったが、決して清潔とは言い難い所であった。

そこでは主食のインジェラとコーヒーを作っていた。インジェラに関しては後で詳しく説明することとして、ここでは貴重なコーヒー体験をお話ししよう。

エチオピア人は大変コーヒー好きである。
各家庭でのコーヒータイムは、ゆっくりと時間をかけて(1時間30分程)味わうのである。
その味わい方には決まりごとがあり、さながら日本の茶道のようである。

昔から伝わる正式な「コーヒーセレモニー」は、次回にハラールでの体験を書くことにして、一般の家庭で毎日のように行われている、コーヒータイムの様子を紹介しよう。

エチオピアでは、コーヒーはブンナと呼ばれ、家族や近所の人を集めて儀礼的に楽しまれている。

まずは、コーヒー豆を湯で洗い、お皿のように底の浅いフライパンで煎る。


油がしみ出して、香ばしい香りを漂わせるようになると、焦がさない程度に煎って火から下ろし、冷めてから小型の臼「ムカチャ」に入れ、鉄の棒でついて粉にする。

ジャバナ」と呼ばれる土器のコーヒーポットに入れ、炭火の上に直に載せて沸騰させる。
火から下ろして、コーヒーの粉が沈むのを待って、その粉が浮かび上がらないように茶碗に注ぐのである。

茶碗は「スニ」と呼ばれる把手の無いもので、日本の湯のみ茶碗に良く似ている。
通常はこの行為を薄ぐらい土間で、香を焚きながら行うのである。

レストランだったので、香は焚いていなかったが、コーヒーは全く同じ方法で煎れてくれた。
砂糖がたっぷり入った小さなカップに、濃厚なコーヒーが注がれて出てきた。

カリッとした深いコクのあるコーヒーであった。こんなにも深いコーヒーは初めてであった。
これを、何杯も何杯もおかわりをして飲むのである。

日本茶のように、同じコーヒー豆で3度程、繰り返しコーヒーをいれるのである。
「2番煎じ」などという概念がコーヒーにもあったとは驚きであった。

いいコーヒー豆は全て輸出品にまわされて、ここにあるコーヒーは最低ランクの豆のはずであった。

しかし、いままでのどのコーヒーよりもおいしいと感じた。いや、まちがいなく、おいしかった。
忘れられない、コーヒー体験であった。


さあ、ナチュラルコーヒーとの貴重な経験ができたここジンマを発って、次なる目的地はハラール

ハラールへは、どうやって行けばいいの?」バスに乗り込んだ私が聞いた。

「一端アジスに帰ってから、列車か飛行機ね。ハラールはすごくきれいなとこよ!たのしみね。」アベベ

 
総出で見送ってくれた、ジンマの人々の影が小さくなっていく。
さようならジンマ。そして、ありがとう。